第12章 more than a million miles アレン裏
私はアレンを見た。
そう、あの夜のパーティーに勝手に私の心を盗んだ人を…
「でも残念、せっかく会えたのに…」
私は身体を起こし、自分の両手に目を落とした。
「私、とても汚いもの」
真っ赤なショールはまるで返り血のようだった。
「薬、臓器密売…法で裁かれる事をいっぱいして、今まで気付かなかったけど、この手も、心も…醜いの…」
涙が溢れて来た。
貴方に追い付きたくて、並びたくて…やっと叶った夢の代わりに私は独り…
追い付きたくて、意地を張ればすぐに足元だって見えない…
「こんな姿じゃなかった。
あの日の私のままで、貴方に逢いたかった…」
「レディ…」
ふわりと優しく、自分を抱きしめる存在があった。
「アレ…ン?」
振り返れば、優しい笑みをたたえて自分を見下ろす少年のような人。
私の、愛しい人。
「初めて貴女にお会いした時、女神を見た気がしたんです。
凛として、美しくて…
すぐに貴女を嫁にほしいと言いました。
けれど、貴女の父は貴女をいつか僕の会社のライバル会社の息子に嫁がせると言いました。」
「え…?」
頭が真っ白になった。
「はい。だから、そんな政略結婚紛いな事をする父親なら、と気が付けば貴女の父親を殴っていました…」
「…!」
「僕の父は僕を庇い、ウォーカー会社の誰かが、という事で世間に行き渡らせたんです。
でも、僕はそれじゃ納得いけず、貴女に会って真実を伝えようとずっと捜していたんです」
すみませんでした、とアレンは私を抱きしめる手に力を込めた。
「僕のせいで傷ついて、僕のせいで苦しんで…」
「貴方が謝る事じゃないわ。貴方は私を助けてくれていたんでしょう?」
涙を拭い、彼の手に私の手を添えた。
根本的に言えば、私達は互いに好き合い、私は彼に追い付くため、彼は私を助けるために捜していたのだった。
拍子抜けした気分になったが、すぐに自分の犯した罪を思い出した。