第12章 more than a million miles アレン裏
「いいじゃない…私みたいな人間、一人くらい消えたって」
私は顔を見られたくなくて顔を反らすと、彼はそれを察したのか、覆い被さっていた身体をどかした。
汚いと、最初は思ってた、こんな世界。
金、女、薬…殺しなんて当たり前で、そんな事を当たり前にする父親が汚いと思ってた。
「…貴女の父親って、確か」
思い出したように、アレンは口を開いた。
私は小さく微笑み頷く。
「そう、この世界で急成長した麻薬の密売人…
でも父は何者かに殺されて、唯一身内である私は父に託された麻薬を売りに、父の後をついでしまった。」
こっち側の住人になった。
それからは楽しかったわ。
初めてやったギャンブルでがっぽり稼いで、ポーカーで相手を騙して…
自分の腕に自身が持ててきた頃に、調べ続けていた父を殺したのがウォーカー会社の中にいるってわかったの…
表の世界でも家具の有名なメーカーだったから、こっちの世界にいるのに驚いたわ
私はちらりと彼を向いて妖しく笑う。
けれどアレンは少し硬い表情で私を見つめるばかり。
私は苦笑して、再び深紅の天井を見上げて話し出す。
「酷いと思ってるけど、一応私のお父さんだったし、ウォーカー家の御子息のバースデーパーティーに私も出席した…
そこで、私は出会った。
天使のような人に…
何にも汚れない、寄せ付けない無垢な瞳を持った人………父の仇だと言う事も忘れて私はくぎづけになった。
でも、その人はこの世界では確かな高位の人間。
まだまだ未熟な私には遠すぎる存在だった…
だから、この世界を渡り歩いた。彼の………貴方の視野に入るために…」