第12章 more than a million miles アレン裏
「お待ちしていましたよ、美しい女王様」
「貴方がここのオーナーだったのね」
大して驚くことなく、私は言った。
「アレン・ウォーカー卿」
表社会でもよく聞く名だった。
私もこの姿じゃなく、表社会の姿で何度か会った事がある。
私より1、2年下らしいが大きな目がもっと幼く見せていた。
アレンは少年のように微笑み、銀色の瞳で私を捕らえた。
「今日は何の御用で?」
「決まってるじゃない」
私は彼に近づき、そしてくいっと顎を持ち上げた。
「貴方の地位を頂きにきたのよ」
「ついに僕の所まで、蝕む気、ですか」
いいえ、と私は首を振った。
「貴方で終わりよ」
「?」
アレンはキョトンとして私を見上げる。
私は彼の向かいのソファーに腰を下ろし、脚を組む。
「貴方の持つ資格があれば、この裏の世界の頂点に立つことができると聞いているわ。」
「女帝になるつもりですか?」
アレンの問いに私はクスッと笑う。
「“ハートの女王”は傲慢で、邪魔な存在はすぐに首をはねてしまう、魔女だもの」
「クスッ…僕に勝てると思っているんですか?」
「全力は尽くすつもりだけれど?」
アレンの眉がピクリと動いた。
瞳の奥で炎が静かに燃えている。
「私の腕前は墓場で眠る各地のオーナー達に聞いて」
「貴女が負けたら、何をくれるんですか?」
モノクロのトランプカードを取り出し手慣れた仕草できっていく。
「私が負ければ、私の全てをあげるわ。この世界での地位も、金も私自身も…」
「何故そこまで賭けるんですか?」
カードを均等に二つに分けていく。
「勝負に勝ったら、教えてあげるわ」
そう言って不敵に笑む。
アレンはそれに満足気に頷くと、トランプの束を私に差し出した。
「ポーカーでいいですね?」
「それが貴方が1番得意とするゲームなら…」