第10章 「アイシテル」 ラビ切甘裏
「ラビ」
「何さパンダ?」
「我々一族はたまたま、こちらにいるだけ。いつここを去るかわからん。要らぬ感情は捨てろ」
「………」
もう幾度となく言われ続けた事である。
入団したての頃はこんな言葉、すぐに聞き流していたのに…
いつしかこの言葉が辛くなっていた。
そしてそれに邪魔されて、に伝えられていない言葉がある。
好きだ、とか愛してる…
心の底では言え言えと叫んでいるのに、ブックマンとして未来の自分を失いそうで…
だから、に想いを寄せていた頃だって、彼女から告白して来るまで待った。
当然、今だって一度も言った事はない。
愛というのは目に見えないものだから、捕まえておく事はできない。
失ってしまうのが怖いんだ、
を…
人間というのはすぐに心変わりする。
もいつか何も言わない自分に痺れを切らして去って行くのだろう…
その時、少しでも情を薄めておけば、互いに辛い思いをしなくていい。
これは、の為…
ーーー・・・
『ラビ、今度はいつ帰って来れるの?』
「もうすぐ、もうすぐ帰るさ~」
今日はいつもよりもの声に元気がない。
疲れているのだろうか
「どした、元気ないさ?」
『ラビ…あの、私…』
言おうか言うまいか迷うようなの声が聞こえる。
『やっぱり何でもない…帰って来たら言うわ』
「?そうか…じゃ、なるべく早く帰るから!」
『うん…』
プツン…
今日はいつもよりも早く電話が切れた。
ツーツーと後に残された自分の受話器が虚しく鳴く。
の様子がおかしい。
いつも、電話の終わり際に言う大好きも言ってくれなかった。
まさか、
(俺の事、好きじゃなくなった?)