第4章 "好き"の行方は知らぬまま、
夏休み最後の日の夜。まだ明るい空の下、そら達4人は晩ご飯を終えると、庭に出ていた。
『庭に出ろ、なんて……何企んでるの?』
「じゃーん。花火」
顔の高さに掲げるのは孤爪。目を丸くしたそらだったが、すぐに顔をくしゃっとさせて笑った。
『やろ!あ、待って、バケツとライター持ってくるから!』
花火だ花火だ、とハシャぎながら部屋に戻ったそら。その背中を見ながら、3人は同時にため息を吐いた。
「かわいい」
「天使っすね」
「抱きてェ」
「「!?」」
ラストの黒尾の一言にギョッとした孤爪と灰羽。2人がグッと距離を詰めたところで、タイミングよくそらが戻ってくる。チャッカマンと小振りのバケツを抱え、そらは首を傾げる。
『研磨、リエーフ、なんか黒尾に近くない?あ、まさか3人って実はそういう………』
「「「いやいやいやいや!!!」」」
そんなわけないスよ!クロはないね、おい失礼だなケンメァ!云々。そんな3人に、そらはぷふっと噴き出した。それからけらけらと笑いながら袋から花火を取り出した。
手渡された2本の手持ち花火を、灰羽はそらに火を灯してもらう。シュボッ、と音を立てながら花火が燃え、夕闇を明るく照らした。
「必殺・二刀流!うぉりゃああああああ!」
「ちょ、リエーフ危ないんだけど」
両手に花火を持ち、グルグルと回り始めた灰羽。口調こそ嫌そうだが、表情は明るく、孤爪も楽しそうだ。きゃっきゃとハシャぐ後輩を見ながら、3年の2人は線香花火を取り出した。
「どっちが長いか、勝負しよーぜ」
『いいよ、臨むところよ!』
ちょこんとしゃがみ、せーので火を点ける。パチパチと火花を出す線香花火を眺め、そらが提案する。
『ね、長かった方のお願いを聞くってのはどう?』
「いいな、ますます負けらんねェ」
バチバチと松葉のように弾ける火花。やがてそれは低調になり、小さな珠となる。そして、ポトリ、と、そらの線香花火の炎が消えた。
「俺の勝ちだな。じゃあ―――」
―――俺と、付き合って?
2人の視線がぶつかり、絡まり合う。熱の篭った黒尾の視線に、そらはもう、目を逸らすことなどできなかった。