第4章 "好き"の行方は知らぬまま、
『え、黒尾………それ、どういうi』
「そのまんまだよ。好きだから、俺と付き合ってくれっつってんの。願い事、聞いてくれんだろ?」
じっとそらを見詰める黒尾。その視線に、段々とそらの顔が熱を帯びていく。
何か言わなきゃ。黒尾に、好きだって、付き合ってって言われたんだから。こういう時なんて返すんだろう?口を開いてみるも言葉にならず、意味のない音が出るばかり。困り果てたそらの耳に、シュボオオオという音が入り込んだ。
ふと振り返ると、孤爪が小さな仕掛け花火に点火したところだった。赤、青、白、黄色。様々に色を変える花火を見詰め、そらはゆっくりと立ち上がる。そしてその隣に、黒尾は並んだ。
『キレイだね……』
「おう。でも……そらの方が綺麗だぜ?」
『っ、じ、冗談はいいよ///』
「ウソじゃねェよ。そらが好きだ」
そう言う黒尾の目はいつになく真剣で。思わずそらは見惚れた。漆黒の瞳には、花火に照らされるそらだけが映っている。そっと、黒尾がそらの肩に手を置く。ゆっくりと2人の影が吸い寄せられるかのように近付き、重な―――
「クロさんちゅーしようとしてる!!」
―――らなかった。
横槍を入れた灰羽はずんずんとそらに近付き、後ろからその腕を引く。ひょこりと顔を出した孤爪も、不満気だ。そして一番不期限そうなのは、邪魔をされた黒尾当人。
「ンだよ、気ぃ効かねェな」
「そらは俺のっすよ!」
「一番はおれだよね、そら?」
『え、ちょ、待っ、待ってぇ!』
灰羽の手をすり抜けたそらは、脱兎のごとく逃げ回る。それを追うデカいの2匹とプリンが1匹。まったく、ひどい絵面だ。
『ほら、私っ、大学受験あるから、っそういうの、受け付けないからぁ!』
「じゃあ待ちます!」
『じゃなくて!』
「待つのは慣れてるもんな、研磨」
「もうずっとだもんね」
『っなんでそうなるのよ!』
ぎゃあすかと騒がしく走り回る4人。夜空に浮かぶ三日月は、まるで微笑っているかのよう。いつまでも楽しそうな声に、優しい月明かりが煌々と照らす。
そらが誰を選ぶのかは、また別の機会にでも。
END.