第9章 夏の終末りに想うこと feat:夜久衛輔
それが、俺の体験したちょっと変わった出来事。嘘みたいな話だけどさ、証拠にホラ、俺の部屋にはまだあの時のバレーボールが残ってるんだよな。
今日は8月最後の日。
余年前、俺と紗凪が、最期を迎えた日。
今年もあの花束を手に、俺は君に会いに来たよ。
「紗凪、また会おうな……」
俺が死んでからか、それとも来世なのか。それは分からない。けれどきっと、俺達ならまた、逢えると信じている。あんな不思議なことがあったんだ、もうどんな運命だって乗り越えてみせる。
紗凪に会うためなら、どんなシガラミだって壊してやるよ。だからさ、紗凪、
「ちゃんと、待ってろよな」
ふわり。
花の香りが、風に乗って届く。
『もちろん、いつまでも、待ってるよ』
紗凪が笑った声が、聞こえた―――。
【夏の終末りに想うこと feat:夜久衛輔】
END.