第4章 "好き"の行方は知らぬまま、
その後、黒尾と灰羽はそらこっぴどく叱られて、朝ご飯抜きになった。空っぽのお腹を抱え、ひいひい言いながら灰羽は宿題に向かう。そんな様子を横目に見ながら、そらは孤爪に愚痴を溢した。
『だいたいさ、なんで私が朝起きたら黒尾とリエーフの間にいたんだろうね。ほんっとナゾ』
「そらが落ちたんじゃない?ベッドから」
『まさか(笑)』
「あー、それ犯人リエーフ。そらが寝た後にベッドから俺らの布団に持ってきたの」
『………お昼ご飯もいらないの?』
「うえーん、ごめんなさいぃ!!」
『ほら、口じゃなくて手を動かすの!ここ間違ってるから!』
「びえー!」
黒尾の暴露に、ドスの効いた声で問い掛けるそらに、灰羽は泣き泣き謝る。スパルタ方針に切り替えたそらに、高みの見物を決め込んだ黒尾と孤爪は、ひそひそと言葉を交わす。
「女って怖ぇ……」
「そらは昔からそうじゃん。おれたちがケンカした時もさ、どっちが悪くても結局は両成敗だったし」
「そういや、そーだった」
幼き日を思い出す黒尾。確かに、"クロにいじめられた"と研磨が泣いた時だって"研磨がいつまでもゲームやってるから黒尾が怒ったんでしょ!"とそらは両方の頭にゲンコツを落とした。
思い出し笑いをする黒尾を、そらは『気持ち悪い』と一蹴。黒尾は孤爪に泣き付こうとするも流石にこの辺りは慣れているのか「おれトイレ」と逃げ出し、さらりとかわすのだった。
時々脱線しながらもなんとか昼までに宿題を終えた黒尾と孤爪。だが灰羽だけは終わらなかった。
『はい、リエーフとりあえずここやっちゃって。黒尾、私お昼ご飯作ってくるから』
「うっす。おら、やるぞリエーフ」
「うえぇん、クロさん怖いよおおお」
もうずっと机にへばり付いてる灰羽。半ば号泣状態でペンを動かす様は、見ていて可哀想になる程だ。まぁ、宿題をいつまでもやらない灰羽が悪いのだが。
お昼ご飯にとそらが作ったのは親子丼。食料の有難みを感じながら、ほっぺに鶏肉を溜め込む灰羽。『リスみたい』と笑うそらに、灰羽もつられて笑みをこぼすのだった。