第4章 "好き"の行方は知らぬまま、
『ねぇ、今思ったんだけどさぁ』
食後の休憩時間、ソファにゆったりと腰掛けてMOW(イチゴ)を食べるそらが、せっせと茶碗洗いをする3人に問い掛ける。
『まさか泊まってかないよね?』
「え、違うの?」
『は、黒尾泊まるの?』
「泊めてくれないんスか?」
『え、待って、なんで逆にそんなに泊まる気満々なのかなリエーフは』
「そらと寝たかったのに」
『うん私も研磨と寝たいよってそうじゃなくて!』
バンッ、とテーブルを叩くそら。にこ、3人にと笑い掛けるがその眼は1ミリたりとも笑ってなんかない。
『なんで泊まる気なのっては・な・し!』
ずいと詰め寄るそらに、3人は顔を見合わせる。
「なんでって……そりゃあそらともしかしたらもしかしないかもしれないだろ」
『ごめん黒尾、全く分かんないんだけど』
「だぁかぁら、クロさんはそらとイチャコラしたいんですよね?」
『はぁ?』
「やべ」
トイレトイレ、とわざとらしく逃げ出した灰羽の背中に、そらのトゲトゲしい視線が刺さる。それを見送ってから、そらはお皿を拭き拭きする研磨に目を遣った。
『研磨は?』
「分かんないとこそらに教えてもらいたくて」
『そっかぁ。研磨は偉いねー』
よしよしと頭を撫でるそらに、孤爪は嬉しそうに目を細めた。それを快く思わない黒尾は無言で移動したかと思うと、いきなりそらに後ろから抱き付いたのである。
「むぎゅー」
『ちょっ、むぎゅーじゃないでしょ。離してよ、暑苦しいから』
「イヤじゃないの?」
『っ、い、イヤではないけど………』
モゴモゴとそらが濁したところで灰羽が帰還。俺もギューしたい!と突進したのをスラリとかわし、そのままお風呂場へ直行。『覗いたらぶっ殺すからね』と物騒な事を言い残し、湯煙へと姿を消した。
「研磨さん、宿題教えてください!」
「後でね」
「えぇ〜、今っスよぉ〜」
そんなやり取りをする後輩を眺めながら、ぼんやりと黒猫は考える。さっきのは、どういう意味だったのだろうか。そらの言葉の意味が分からず、ほとんど宿題が捗らなかったのは、言うまでも無い。