第4章 "好き"の行方は知らぬまま、
昼食の用意が整ったので、そらは2階にいる黒尾と灰羽を呼びに向かった。トントンと階段を登り、部屋の前へ立つと、ドタバタと室内から動き回る音がする。怪しいと思い、間髪入れずにドアを開ける。
「よ、よぉ、そら」
「っご、ご飯できました?」
『………何してたのよ』
そらは部屋を見回して不思議に思った。黒尾もリエーフも、挙動不審なのに部屋に変わった様子はない。テーブルの上の宿題も、特に変わった様子はな………ん?
まさか、と思い2人の宿題を穴が開くほど見詰める。すると案の定、たった数問しか進んでいないのだ。
『怒らないから教えて、何やってたの』
「いや、そらもう怒ってるだ…」
『教えて』
「そらの卒アル見てましたサーセン!」
『ハァア!?』
慌ててそらが灰羽に詰め寄れば、その背中に中学校の卒業アルバムがしっかりと隠されていた。よく見れば黒尾の背中にも、小学校の卒業アルバム。
すぅ、とそらから表情が消えた。
『なるほど、そういう事か。研磨と私がせっせとアンタ達のご飯作ってる間にこんな事してたんだ。ふーん、へぇー、そんなに余裕あったんだぁ、知らなかったなぁ』
温度も抑揚も全くない声で、そらが言う。
「そら、サン……?」
『だったらねぇ……宿題くらい自力で終わらせなさいっ、このあんぽんた―――ん!!』
「「サーセンっしたアァァァアッ!」」
それが、黒尾、灰羽の両名のお昼ご飯抜きが決定した瞬間でありました。
そしてそして、その数分後。腹を空かせたDK2人の前で美味しそうにそうめんを食べるのは、そらと孤爪。しばらくはその光景に耐えていた黒尾だったが、ついには食欲に負けたようで。
「ねぇ悪かったって。そらって中学吹部だったんだな、笛吹いてるの可愛かっ…」
『クラリネットですが』
「ア、ハイ………」
そらに声を掛けるも瞬殺。
「そら、俺もそのそうめん食べた…」
『あんたは残飯で十分でしょ』
「……うす」
続く灰羽も撃沈。殺伐とした空気が漂った訳だが、最終的にそらは黒尾と灰羽にもご飯を食べさせてあげる辺り、だいぶ甘いのである。