第4章 "好き"の行方は知らぬまま、
灰羽の頭がショート寸前なのに気付いたそらは、そろそろお昼にしようか、と提案した。すると孤爪がおれも手伝う、と立ち上がった。それに気付いた黒尾がジトっとした目線を向ける。
「ちょいと研磨くん。まさか手伝いにかまけて宿題を放棄するつもりじゃないだろうな?」
「は?そんなことしないし。クロも、そらがいないからってリエーフと遊んじゃダメだよ?」
『ハイハイその辺にして。ほら、研磨行くよー』
トントンと階段を下る音を聞きながら、ギリっと黒尾は奥歯を軋ませた。別に研磨が宿題を放置する目的だとは思ってない。ただ研磨ああ見えて狡猾だから、サクッとそらを攻略しそうで嫌なだけだ。
黒尾が内心でそう思っている横、黙々と手を動かしながら、灰羽がぽそりと呟いた。
「ズルいっすね。抜け駆けとか」
「あぁ、そうだな……ってお前もかよ………」
「当たり前っすよ」
はぁ、とため息を吐いた黒尾に、灰羽はニヤッと笑ってみせたのだった。
さて、そんな3人の事情など露ほども知らないそらは、台所で孤爪と昼食作り。棚から出したそうめんを手に、うぅんとそらは唸った。
『ねぇ研磨、これ人数分じゃ足りないよね?』
「クロとリエーフが食べるよ、たぶん」
『んー、じゃあ6人前、かなぁ……』
そう言いながら、そらは袋からそうめん達を取り出す。4人で6人前って何よ、と思いながら、そらは彼らの親に同情した。きっと、食費がすごいんだろうな、特にリエーフとか。
そうめんを茹でるそらの横で、孤爪はサラダを作る。レタスにキュウリにトマトにとうもろこし。夏野菜をふんだんに皿に盛り付け、鼻唄を歌うそらの肩をトントンと叩く。もちろん、いつもよりすこーしだけキョリを近付けるのも忘れずに。
「そら、終わったよ」
『研磨ありがと〜。じゃあ麺つゆ作ってもらっていい?そこにあるから』
「あ、うん」
にこりと笑うそらに、孤爪の頭は一瞬白くなる。先輩で幼馴染みでこの可愛さは反則だよなぁ、と口が緩みそうになるのを寸前で堪えた。お手伝い作戦は失敗だな、と頼まれた仕事をこなしながら、孤爪は苦笑し、思うのであった。