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ハイキュー!! 夏休みバトン!

第4章 "好き"の行方は知らぬまま、




3人が宿題の山に向き合ったのを見、例年より1日だけ夏休みが長くて助かった、と、そらは胸を撫で下ろした。8月31日の今日は幸いな事に土曜日。明日から9月で本来なら新学期だが、日曜日なのである。


必死になってシャーペンを動かす3人を、そらはベッドに腰掛けて悠々と見下ろし―――それから眉間にシワを寄せた。


『リエーフ、ペン止まってるけど?』


「2次関数ってなんでグラフひん曲がってるんでs」


『ひん曲がってるのはあんたの脳ミソ』


ズバッと言って、それからそらは灰羽の隣へと腰を下ろす。黒のadidasのペンケースから水色のボールペンを取り出し、プリントに連なる問題に文字と数字をサラサラと書き連ねていく。


そして5分後。灰羽の白紙の宿題の3割を占める数学のプリント全てに、そらがヒントを記し終えた。


『はい、これで解ける。できなかったら罰ゲーム。1問私に訊く毎に何か奢ること』


「うげっ、それは………」


『つべこべ言わずにハイ、やって!』


渋々プリントに向き合う灰羽。"どうせできないし"と語っていた目の色がガラリと変わり、手のスピードは段々と加速していく。これなら大丈夫、そう思ったそらは満足気に頷くと、孤爪の隣へと移動した。


『研磨は、どう?』


「国語、読書体験記とかメンドクサイ」


『うわぁそれ残したか』


一番面倒臭いと思われる宿題をなぜ最後に残した、と額を抑えるそら。その横で孤爪はチラチラとスマートフォンの画面を確認する。ピコピコと点滅するディスプレイには、ゲームアプリからのイベント情報。


手を伸ばしたい衝動をどうにか抑え、孤爪はそらのシャツの裾をくいと引いた。


「ねぇ、おれどうしたらいい?」


『えーと、まず本は読んだの?』


「メンドかったから、ショートショート」


『星新一ね。なら書きやすいじゃん』


その辺にあったルーズリーフにそらはペンを走らせる。星新一を読んで感想文を書く男子高校生が果たしてどれほどいるものか、と微妙な感想を抱きながら、そらはコツを書き連ねる。


ありがと、と短く例を言うと、孤爪はまっさらな作文用紙とにらめっこを始めるのだった。


夏休みが終わるまで、あと38時間―――




 
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