第2章 月夜に咲くのは甘い花
『当たり前ですけど、甘くて美味しい・・・』
「それは良かった」
『じゃ、今度は縁下さんがどうぞ?』
そう言いながら、袋からまた綿あめを摘もうとする。
「待った。俺はこっちの甘いのを分けて貰うからいいんだよ」
『こっちの、って・・・んン・・・』
そらが言い終わるよりも先に、その甘い唇へと触れるだけのキスを落とす。
「・・・ホントだ、甘い」
『今のは、ズルイ・・・』
明かりなんかなくても分かる。
きっと今のそらの顔は・・・
再び大きな音が鳴り、夜空が明るく弾けた。
仕掛け花火というだけあって、左右に広がったり、小さな光が回りながら夜空を駆け巡ったりしている。
『キレイ・・・』
夜空に輝く光で、そらの顔がキラキラと反射する。
「うん・・・キレイ、だよ」
いつもと違う雰囲気の、そらがね・・・
『手を伸ばしたら・・・届きそう。月の欠片が降ってくるみたい・・・』
「星、じゃなくて?」
星が降る・・・っていう例えはよく聞くけど、それが月って言われると・・・不思議な感じがした。
『月、でいいんです。星はホントに降る時あるから・・・・・・・・・ぁ・・・』
話しながら目が合うと、そらはちょっとの間を開けて照れながら目を逸らした。
今の間って・・・
「もしかして今、期待しちゃった?」
『べ、別に期待とか・・・・・・でも・・・ちょっとだけ・・・』
両手で顔を隠しながら、そらが小さくポツリと零す。
いつもなら、恥ずかしがってばかりなのに。
こんな可愛い姿を見せられたら・・・
「俺は期待に答えないと、だな?」
そらの頭をかき寄せ、さっきより長いキスを落とす。
息苦しさの為か、俺のシャツをキュッと掴む小さな手さえ、愛おしくて堪らない。
ようやく解放すると、そらはペタリと俺にもたれ掛かり小さく息を吐いた。
『長くて、死んじゃうかと思った・・・』
「これ位じゃ死なないよ。ホントはもっと、したいからね」
俺の言葉にそらがピクリと体を震わせる。
『じゃあ・・・もう1回・・・』
「お強請り上手だな」
そう答えて、俺達は月の欠片が降り注ぐなか、何度も何度もキスを交わした。