第2章 月夜に咲くのは甘い花
慣れたように私の頭にポンっと手を乗せ、先に降りてるから何か羽織っておいで?と言って部屋を出て行った。
補充・・・ねぇ・・・
もう1度、まだ熱さが残る場所に手をやり、ひとり微笑んだ。
さて、と。
フッとひと息ついて靴下を履き、クローゼットから出したサマーカーディガンを羽織ると私もリビングへと戻った。
邪魔にならないように静かにドアを開けると、すぐ横には菅原先輩にバッチリ見張られている東峰先輩、その向こうには縁下さんが2年生組を教えていて。
縁「だからさっきも言っただろ?ここはこうじゃなくて、こっちのを使うんだって!」
田「だぁっ!なんか頭が混乱する!」
西「・・・力、何か機嫌悪くねぇ?オレらに気兼ねなくそらとチューでもして機嫌直してこいよ」
『えっ?!』
西谷先輩のとんでもない発言に驚きの声をあげてしまう。
縁「西谷・・・真面目にやらないと、泣かすよ?」
西「・・・スンマセン。そらも悪ぃな」
いえいえ、と軽く手を振ってから、影山達の様子を見る為に視線を動かす。
月「馬鹿なの?っていうか、馬鹿デショ?」
あれ?
さっきまでは山口君が教えてたのに・・・
いつの間にか月島君とチェンジして、足も腕も組んだ月島君が毒を吐いている。
そして山口君はと言うと・・・さっき月島君が座っていたキッチンカウンターに突っ伏してしまっていた。
『山口君、大丈夫?』
背中に手を置き、そっと声をかけた。
山「池田さん・・・オレ、人に教えるのって・・・苦手だったかも」
グッタリと疲れきっている顔をあげ、山口君は大きく息を吐いた。
『あの2人の理解能力が特殊なだけだから。私も手伝わなきゃなのに、頼ってばっかでゴメンね?』
山「それは大丈夫だよ!ただ・・・そのうちツッキーも」
月「僕が、ナニ?」
うわぁ・・・もの凄く不機嫌な月島君が私達を見下ろす。
不機嫌な理由は・・・聞かなくても分かるからいいや。
月「ホント疲れた。もうバレー以外は頭使った事ないんじゃない?あの人達は」
見れば、東峰先輩には澤村先輩が。
影山には縁下さんが。
日向君には菅原先輩がそれぞれマンツーマンで張り付いて面倒を見ていた。
その組み合わせが、とても効率が上がりそうなペアだったから思わず笑ってしまった。