第2章 月夜に咲くのは甘い花
ぽふっと縁下さんの腕の中に入った。
『ほんのり、暖かい・・・』
縁「思ったより、冷えてるじゃないか」
そう言ってギュッと抱きしめる縁下さんに甘えて、私も、その背中に腕を伸ばした。
縁「はは、甘えん坊だなぁ」
『ダメですか?』
縁「ダメな訳ないだろ?むしろ大歓迎だよ。だけど・・・」
少しだけ体を離して、縁下さんは私の頬に手を添えた。
縁「ここには今、オオカミがたくさんいるんだから・・・甘えん坊光線を出すのは、今だけにしろよ?」
そっと顔を上げられ、あ・・・もしかしてこれは・・・と、ちょっと期待して目を閉じた。
ー あ~ コホン・・・ 1番のオオカミは、縁下じゃないのか? ー
自分達以外の声に驚き、抱き合ったまま声がした方を見ると・・・そこにはいかにも目のやり場に困っている澤村先輩が立っていた。
澤「池田さんの手伝いに縁下を行かせたら戻って来ないし、それほど重いものなのか?って来てみたら・・・ね」
私達は顔を見合わせ、慌てて体を離した。
縁「大地さん・・・いつから居たんですか・・・」
澤「え?あ~・・・縁下が池田さんに、おいでって言ってた辺り・・・でしょうか」
でしょうか・・・じゃないですよ!
急激に熱くなる顔に両手を当てて隠した。
縁「そんなに前からいたなら、もっと早く声かけてくださいよ!」
澤「かけようと思ったけど、その、邪魔したら悪いかなって。それに既に今日は俺達みんながお邪魔してるわけだし?」
もう、笑うしかないです・・・
澤「とりあえず、コレを持って先に行ってるから・・・えっと、ご、ごゆっくり・・・」
そう言って澤村先輩が扇風機とミニテーブルを両方持って階段を降りて行った。
『ごゆっくり・・・って、言われても』
縁「ゆっくりなんかしてられないよな」
『そうですね・・・』
縁「でも、せっかくだから下に降りる前に・・・」
私の髪を撫でながら、ほんの一瞬だけ頬に口付けた。
その場所がとても熱く感じて、思わず手のひらで押さえる。
縁「そらが足りなくなったから、補充した」
『補充、出来ました?』
縁「ちょっとだけ。これ以上は時間的に無理だから・・・そんな顔して、煽るなよ」
『だって・・・』