第2章 月夜に咲くのは甘い花
『澤村先輩?私ちょっとここを離れてもいいですか?』
黙って部屋を出るのも気が引けて澤村先輩にひと声かけた。
澤「どこへ?」
『やっぱり西谷先輩達が集中出来ないと宿題終わりそうもないので、扇風機取りに行ってきます。あと自室にもちょっと用事で』
澤「それなら俺も行くよ。持ってくるの大変だろ?」
言いながら腰を上げる澤村先輩に、それ位は大丈夫だからと言って私はリビングを出た。
廊下に出ると、ほわん・・・と暖かく感じるのは、やはりリビングの温度が低いからなんだろう。
階段を上り、自分の部屋のドアを開けたままにして扇風機とミニテーブルの用意をする。
両方持ってたら、ドアを開けるの大変だし。
そうだ、ついでだから靴下も履いとこうかな。
今でさえ体が冷えてるから、これ以上は、ね。
1度持った扇風機とミニテーブルをドアの外に出し、タンスから靴下を取り出した。
縁「これ、両方持つのは無理なんじゃない?」
背後から声をかけられ、軽く肩が跳ねた。
『縁下さん、驚くじゃないですか・・・』
縁「驚いたのは俺だよ。大地さんが俺にそらが部屋に扇風機取りに行ったけど、手伝ってやってくれって言われてさ?来てみれば、テーブルまであるし?」
チラリとドアの方を見ながら縁下さんがため息をついた。
『扇風機はまぁ、必要だし。ミニテーブルは澤村先輩と菅原先輩の為に持って行こうかなって。さすがにずっと床に座って壁に寄りかかって・・・は、大変だし』
縁「で、その靴下は?」
『これは・・・少し体が冷えて来たから、靴下でも履いとこうかな?なんて』
軽く靴下を掲げて笑う。
縁「冷えて来た?」
私の言葉に、縁下さんがスタスタと歩み寄りノースリーブから伸びた私の肩や腕に触れる。
縁「ちょっとじゃないよ、結構冷え冷えじゃないか・・・これは靴下だけじゃ、ダメなんじゃない?」
それなら薄手のカーディガンも、とクローゼットに足を運ぶと、縁下さんはそうじゃないだろと笑う。
縁「おいで、って・・・言ってるんだけど?」
軽く両手を広げて立つ縁下さんは、穏やかに笑っていて、私が戸惑っていると、ほら早く?なんて催促しながら、また笑った。
『でも・・・下にみんないるし・・・』
縁「ここには、俺達しかいないよ」
もう、しょうがないなぁ・・・なんて言いながら・・・