第8章 おねがい♡サマー仮面【カラ松】
海パン姿にダンボールを太陽の形に切り抜いた仮面。焼けた肌に纏ったタオルのマント。足にはダイビング用のフィンを履き、乳首にはなぜか月と太陽のペイントが施してある。
どう見ても夏の暑さで頭をやられたヤバイ人だ。
私は、脳の処理が追いつかず、呆然と男を眺めたが、やがて誰なのか気づいた。
「あ、えっと……カラ松くん……?」
高校の時、同じクラスだった松野カラ松くん。特別に仲が良かったわけじゃないけど、近所に住んでいるから、今でもたまに道で会って少し話すことがある。
カラ松くんはフッと笑い、指を突き出した。
「ノー! オレはサマー仮面! 愛菜ちゃん! 君にはサマーが足りていない! だから今日はこのオレがサマーを補給しにやって来たんだっ!」
私は、静かにスマホに手を伸ばした。
「ん〜? なんだ? オレの写真を撮りたいのか? 何? モデルになって欲しい? いいだろう! 引き受けた! さっ、このやんちゃな美BODYを惜しみなく撮ってくれっ!」
私はそっとスマホを耳に当てる。
「もしもし? あの、警察ですか? 今、変質者が家の中にいて……」
「ノー! バッドサマー!」
カラ松くんが叫んで私の手から勢い良くスマホを奪った。