第8章 おねがい♡サマー仮面【カラ松】
たまたま仕事が早く終わった日。驚かせるつもりで彼氏の部屋に行ったのがまずかった。
ドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、彼氏に跨り腰を上下に振る知らない女性。
瞬時に状況を把握した私は、咄嗟に目についたテーブルの上のコーヒーカップを投げつけると、そのまま部屋を飛び出した。
女の口紅がベッタリと付いたそのコーヒーカップは、私が彼氏の誕生日にお揃いで買ってプレゼントした物だった。
ドアを開けたら浮気していたなんて、ドラマでよくある王道パターンじゃん。自分でも呆れるけど、いざリアルで起こると、大したことは何もできないものだ。
後ろから彼氏が何かを叫んでいるのが聞こえたが、私は振り返らずに帰ってきてしまった。
以来、その人とは一度も連絡を取っていない。
「あ、何か食べるものあったかな〜。買い物行く気にもならないや……」
私は、冷蔵庫の中を覗き込んだ。
「ん〜何もないなあ。やっぱり買い物だけでも行ってこようかな〜」
独りごちながら冷蔵庫を閉めた瞬間、いきなり後ろから誰かに肩を掴まれた。
え?
驚いて振り向くと、
「ノーグッドサマー!!!!」
いきなり大声を浴びせられた。
「な? え? は? だ、誰!?」
目の前には男が立っていた。