第7章 ハロウィンナイトは危険なあなたと【十四松】
***
愛菜が目を覚ますと、日が昇り、辺りは明るくなっていた。
「う……寒い……」
シートベルトを外し、強張った体を伸ばす。足元の鞄からカーディガンを引っ張り出すと震えながら羽織った。
(そっか、昨日は道に迷ったまま、車の中で寝ちゃったんだっけ……)
隣を見ると、十四松が窓に頭をもたれかけて寝ている。
「十四松くん、起きて!」
「ん〜……」
十四松は、目を擦りながら頭を持ち上げた。
「大丈夫? 朝だよ?」
「うん……あ! 愛菜ちゃん! おはよん、ろく、さんのゲッツー!」
十四松が突然大声を出した。
「も〜朝からうるさいよ〜」
愛菜が笑う。
「愛菜ちゃんこそ、大丈夫? 車の中で寝ちゃったけど、体痛くない?」
「うん! ……でも、なんか少し頭がフラッとするような気も……」
「えー!?」
「貧血かなあ? 大したことはないと思う。あ、そういえば、夢を見てたような……」
「夢?」
十四松がきょとんとする。
「うん……。なんか十四松くんが黄色いコート着ていて、牙が生えてて……」
(覚えてないけど、すごく満たされた気分になる夢だった気がする……何の夢だっけ……)
「えー!? ぼく、牙が生えてるの!? 何その夢!? こわー!」
十四松が大笑いする。
愛菜も笑い返した。
「だよね。変な夢! よしっ、もう明るいから迷わないよね? 帰ろっか?」