第37章 愛はなくとも君がほしい【カラ松】
《愛菜side》
「んぅっ……んっ……んっ……んんっ……」
次第に激しく深くなっていくキス。私の口内を余すところなく犯し、歯の裏までも確かめるように念入りに舌が這う。
本当は……キスはしないと決めていた。
私たちは友達だ。カラ松だって重い愛は望んでいない。あくまで身体だけのセックスを求めている。
『カラ松の童貞を他の女性に奪われたくない』
そう自覚したときから、自分でも薄々気づいていた。
たぶん……カラ松を好きになりかけている……。ううん、もしかしたらすでに好きなのかもしれない。今まであまりに近くにいすぎて、好きなのかどうか考えたこともなかった。
でも、たとえ好きだとしても今ならまだギリギリ引き返せる。この気持ちに気づかないふりをしてやり過ごせば、きっと友達のままでいられる。
だからキスはしたくなかった。もししたら、カラ松を独占したくなりそうで、取り返しがつかなくなりそうで怖かった。
なのに……。
カラ松の顔が離れた。熱のこもった瞳で私を覗き込んでくる。
「愛菜……もっと……キスしてもいいか……?」
そんな恋人に向けるような目で見ないで。勘違いしそう。
「だめ……! もうキスは終わり!」
「なぜだ? そんなにイヤだったか?」
だって、これ以上したら好きになっちゃうよ? セックスしたいだけならキスなんて必要ないでしょ?
「…………」
「愛菜?」
私は目を伏せた。答えるべき言葉はちゃんとわかっているはずなのに。
「ううん、イヤじゃないよ……。やっぱり……もっと……しよ……」
口が勝手に返事をしてしまった。キスしたい衝動を抑えられなかった。
カラ松の首に手を回し、自ら唇を押し付ける。肩を掴んでいたカラ松の手が外れた。
「っ!」
私が押し倒したのか、カラ松が引っ張ったのか。ドサッという音とともに私たちはベッドに倒れ込んだ。