第37章 愛はなくとも君がほしい【カラ松】
《愛菜side》
「ね!? ひどいでしょ!? ライブの客がたったの六人って! 信じらんなーい! トト子、超絶可愛いのにぃ〜!!」
トト子の大きな声。
我に返った私は慌ててタピオカミルクティーを吸った。大好きなはずなのに今日は味がしない。タピオカを噛むのもなぜか苦痛だ。
カラ松と気まずくなってから三日。私は久しぶりに友達のトト子と会っていた。
「そ……そうだね! トト子ならもっとお客さんが入りそうなのに」
「でしょ〜? しかもそのたった六人があのクソニート童貞の六つ子! 本当にサイアクー! なんでトト子の信者ってあんなのしかいないわけー!?」
ズキンと胸に何かが刺さった。
クソニート童貞……。
「ね、ねぇ、トト子……」
「ん?」
「トト子って、あの六人からセッ……クスしたいって言われたことある?」
トト子が目を丸くした。
「セックス?」
「う、うん……ごめん、変な話して……」
自分でも何を訊いているんだろうと思う。でも同じ幼馴染として質問せずにはいられなかった。
「あ〜、もしかして六つ子に何か言われた? 嫌になっちゃうわよねー! あいつら、顔見ればセックスしたいセックスしたいって、年がら年中言ってくるもん。もうあれ反射的に言ってるだけだよ。愛菜も気にしないほうがいいよ」
「そ……そうだよね……」
やっぱりそうなんだ。トト子もいつも言われてるんだ。いまさらカラ松に言われたからって、気にする自分がおかしいよね……。
「愛菜? どうしたの? 大丈夫? もしかしてあいつらに何かされたの?」
トト子が心配そうに顔を覗き込んでくる。
「う、ううん……別に……」
「本当に? 何かイヤなことがあったらトト子に相談して? トト子が注意してあげる!」
「ありがとう、トト子。大丈夫だから……」
店内は若い女性で溢れている。特に女子高校生が多い。お気に入りの店だが、今日はなぜかJKたちの甲高いおしゃべりがやけに耳に障った。