第37章 愛はなくとも君がほしい【カラ松】
私は鞄を肩にかけ直すと、再び歩き始めた。
「カラ松は携帯を持ってないんでしょ? 写真って言われても画像を送れないよ? 現像するわけにもいかないし」
「っ! じゃあ、携帯があれば送ってくれるのか!?」
「送らない」
「愛菜〜! ウェイト! 行かないでくれ! 頼む!」
塀の上で丸まって寝ていた野良猫がうるさそうに目を開ける。
カラ松ってば本当になんなの? わけわかんないよ。
私のことそういう目で見ていたんだ? しかも愛がないけどヤラせてくれ? 失礼すぎる。親友だと思って信頼していたのに……。一人の人間としても見てないじゃん。これじゃただの道具だよ。
「もう帰るから」
「愛菜! すまない! 違うんだ! そのっ……誤解していないか!?」
何が違うんだか。
「じゃあね、カラ松」
私はさっさと振り向かずに歩いた。
「愛菜……」
背中から寂しそうなカラ松の声。
カラ松のバーカ。
六つ子たちみんなクズでクソだけど、それでもいいやつらで大事な友達だと思っていた。
特に……カラ松は……。
地面を染める真っ赤な落ち葉をわざと踏みしめる。シャリシャリと乾いた音を聞きながら、私は家路を急いだ。