第37章 愛はなくとも君がほしい【カラ松】
近所に住む松野家の六つ子たちとは小さい頃から仲がいい。いわゆる幼馴染だ。
六人の中でも私は特にカラ松と仲がよかった。話しやすいし、優しいし、気が合うし。今までいい友達としてやってきたつもり。
それがここにきて突然セッ○ス……?
「愛菜、後生だ! このままじゃオレたち六つ子は全員クソニート童貞のままだ! オレが童貞を捨てればあいつらの希望にもなれる!」
手を合わせて地面に膝をつくカラ松。このまま土下座しそうな勢いだ。たしかに六つ子たちってモテないんだよね。まずニートをやめて働けばいいのに。
「カラ松、ちょっと落ち着いてよ。私たちそういう仲じゃないでしょ?」
カラ松は顔を上げた。
「そうか? オレたち、仲いいじゃないか?」
「仲はいいけど! 友達としてでしょ? こういうのってお互い好きじゃないと難しいよ!」
「フーンッ、たとえ愛がなくても狂った果実を味わってみたくなるときだってあるだろう?」
ないよ。
いや、相手がF6レベルのイケメンだったらあるかもしれないけど……。
向こうから歩いてきたサラリーマンらしき男性が、不審そうにこちらを見ながら通り過ぎていく。はたから見れば痴話喧嘩しているカップルに見えるのかもしれない。
「カラ松、とりあえず立ってよ〜! 私が無理やり土下座させているみたいじゃん! 人に見られたら恥ずかしいよ」
「立ったらセックスしてくれるか?」
「それは無理だってば!」
カラ松はため息をつきながら渋々立ち上がった。
「はぁ、愛菜は困ったちゃんだな。どうすればしてくれるんだ? 裸を見せてくれるのもだめか?」
「だめ」
裸を見せる? そんなの余計に恥ずかしい。
「少しでもか?」
「うん、だめ」
「なら、写真は? 写真ならいいだろう!?」
カラ松ってば本当にどうしちゃったの?
六つ子が女性に飢えていて、カノジョがほしいとほざいているのはいつものことだ。でもその捌け口を友達の私に本気で求めてくるなんて今までなかった。