第37章 愛はなくとも君がほしい【カラ松】
《愛菜side》
「愛菜、セックス……させてくれないか?」
はぁ??
驚いて隣のカラ松を見上げると、真剣な瞳と視線がぶつかった。
「セッ……え? なに? え? 今なんて言った?」
私の聞きまちがい? ありえない言葉がカラ松の口から出た気がするんだけど?
動揺する私とは逆に、カラ松は臆さず胸を張る。
「だから『セ ッ ク ス』させてくれと言ったんだ」
「…………」
聞きまちがいじゃなかった……。というか、聞き直さなければよかった……。
私は思わず道の真ん中で立ち止まった。カラ松も私に合わせて足を止める。
風が刺すように冷たい。11月に入って夕方はめっきり冷え込むようになった。厚めのカットソーを着てきたけどコートも欲しいくらい。風が吹くたびに足元の枯れ葉が乾いた音を立てて舞う。
カラ松は私の肩に力強く手を置いた。
「頼む! もう愛菜しかいないんだ!」
そんなこと言われても簡単に『いいよ』なんて返せるはずがない。
「ちょ……ちょっと待って、カラ松。唐突すぎて話がよくわかんないよ。なんで急にそんなこと言い出したの?」
「限 界 だからだ。セックスしたくてしたくてもう気が狂いそうなんだ」
「…………」
こいつ、堂々と何を言っているの? そんな宣言されても反応に困るんだけど。
「愛菜? もしかして引いているか?」
「う、うん……まぁ……少し……」
カラ松は大きく深呼吸をするとギラギラとした目で私を睨んだ。
「聞いてくれ、愛菜! 引くのはわかるが真剣なんだ! オレは生まれてから一度もカノジョがいない! もういい年なのに未だに童貞だ。でもセックスはしたい! だから幼馴染で親友のおまえに恥をしのんで頼んでいる!」
「…………」
いやいやいやいやいや……本当に何を言ってるの?
『一緒にパチンコに行こう』と珍しく誘ってきたからおかしいとは思ったけど。まさか帰り道でこんなことを頼まれるとは思わなかった。
「どうだ? だめか?」
「だめっていうか……う〜ん……」