第36章 おねえさんがしてあげる【十四松】
愛菜さんはエアコンの温度を上げると、隣のキッチンに行った。電気ケトルに水を入れる。
「お茶がいい? コーヒー? 紅茶?」
「あー……え、えーっと……な、なんでも……」
緊張で頭が回らない。ちゃんと聞こえているはずなんだけど、脳がうまく質問を理解できないみたいだ。
愛菜さんは緑茶をいれると、ぼくの前に湯呑を置いて自分も向かいに座った。
「それで、十四松くんはなんで泥まみれで雨の中を歩いていたのかしら?」
少し前かがみになったせいで、胸の谷間が見えている。
ぼくは慌てて目を逸らした。
「え、えーっと……一松兄さんと戒めようと思って走ってたら滑って転んじゃって……」
「戒める?」
「一松兄さんが『幸せなことがあったら自分で戒めておかないと不幸がやってくる』って言うから、雷にでも撃たれて戒めようと思って……」
愛菜さんはクスッと笑った。
「ふぅん? じゃあ、十四松くんは幸せなことがあったんだ? 何があったの?」
「えっ……」
道でブラが透けているJKを見ました、なんてさすがに言えるわけがない。
それにさっき愛菜さんの裸を見ちゃったから、もう透けブラの感動は薄れてしまった。
言葉を失ったぼくを見て、愛菜さんは笑いながら手を振った。
「そんなに困らないでよ。別に無理に聞かないし。で、一松くんとは途中ではぐれちゃったのね?」
「あい……」
ぼくが転んだのに気づかず走っていってしまった一松兄さん。たぶん今ごろどこかのビルの屋上で雷に撃たれて戒めているに違いない。
一方、ぼくはたまたま通りがかった愛菜さんに拾われた。『風邪引いちゃうから私の家で乾かしていきなさい』なんて言われたら、ついていっちゃうよね。ごめん、一松兄さん。
愛菜さんは壁にかかった時計をちらりと見た。
「まだ夕方だし、雨が止むまでゆっくりしていってね。服は乾燥にかけているから、すぐ乾くと思うし」
ううっ、愛菜さん、優しい。
しかもさっきから動くたびにチラチラおっぱいの谷間が見えマッスル……。
耳が熱くなってきた。愛菜さんの裸がまた頭に浮かぶ。もちろんタッティもおさまらない。