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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第35章 水とワイン/Água e Vinho【おそ松/マフィア松】


「っ……」

少し間があき、ゆっくりと男がうしろに倒れた。

「え……? オソマツ……さん……?」
愛菜の不思議そうな声。

俺は銃を手に大きく息を吐いた。

「だから言っただろ。おまえは才能ないんだよ」

かなりギリギリだったがな。さすがに焦っちまった。

「え? え? 今……??」
愛菜が俺と倒れた男を見比べる。

「バカだよな〜。なんで俺が銃を持ってるって思わないんだろうな? だから素人なんだよ。普通は一番最初にチェックして奪うだろ。んなもん、プロの俺が銃を出して撃つほうが早いっつーの! 正確に当てれるしな」

俺が怪我をして倒れていたから油断したんだろうな。でも片腕は自由だから撃つぐらいできる。甘いんだよ。

「じゃあ、撃たれてはないんですよね!? よかった……!」
愛菜が駆け寄ってきた。心配そうにボロボロと涙をこぼす。

「うん。撃たれてない。でもけっこう出血してるし、そろそろ限界……」

安心したとたん、頭がクラクラしてきた。

「そんな! ど、どうすれば……! 私、運転できないから町に戻れないです!」
愛菜がオロオロと慌てだす。

「ここで待ってれば、弟たちが来てくれるだろ。それよりさぁ、俺の頭を支えて上げてくんない? なんか息が苦しい……」

「は、はい!」

愛菜が俺を抱き起こした。後頭部に彼女の柔らかい胸が当たる。

「あんがと。でもまだ苦しいな……」

「ええっ!」

「悪いんだけどさぁ、ちょっと俺の顔を見てくんない? 倒れたときに鼻折れたかも」

「鼻が!? わかりました!」

愛菜の顔がぐっと近づく。温かい息が当たり、ホッと心が緩んだ。

愛菜が無事でよかった。

そして……俺も生きていてよかった。

今まで死ぬのを怖いと思ったことはなかったのにな。

激昂した男が銃を向けたあのとき、俺は恐怖を感じたんだ。

もう愛菜と一緒にいれないかもしれない。

そう頭によぎった瞬間、俺は心の底から死にたくないって思ったんだよ。


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