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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第35章 水とワイン/Água e Vinho【おそ松/マフィア松】


くそっ、なんだ、それ。かわいい反応しやがって。

俺まで照れくさくなって、目をそらす。

「と、とにかくさ、俺はいいよ。愛菜が使えばいいから。早くしまいなよ」

「はい……じゃあ……。ありがとうございます」

愛菜は素直に紙包みをバッグにおさめた。

俺はエスプレッソをひとくち飲む。
「え〜っと……で、今日はその……婚約者は? 一緒じゃないの?」

いきなりバカな質問をしてしまった。婚約者はさっきまでカラマツがシメてたんだから、愛菜といるわけないだろ。

「今日ですか? さあ……? たぶん選挙の準備をなさってると思います」

「そ……そうなんだ? デートとかしないの?」

「はい。お忙しいらしいので会う機会もなくて」

へ? 婚約者なのに? やけにドライだな。

俺は愛菜に視線を戻した。

「なぁ、親に決められた婚約者って言ってたよな? 愛菜はそいつのこと好きじゃねぇの?」

ストレートすぎるか? でも一番気になるところだ。

愛菜は下を向く。
「好きかどうかなんてわかりません。実はお会いしたこと自体、まだ数回しかないんです」

「そうなの? んじゃ、好きでもないやつと結婚すんの?」

「そうなりますね。でも結婚して一緒に暮らせば、気持ちはあとからついてくると父に言われました」
穏やかに微笑む愛菜。

なんだよ……。好きじゃないやつとでも結婚できるなら、俺と結婚してくれよ……。

喉まで出かかって、なんとか飲み込む。

だからって、マフィアと結婚なんて冗談じゃないだろう。

「まあ、納得してるならいいけどさ……。愛菜は好きな男いないの?」

「っ!」

愛菜がハッと俺の目を見た。思いがけない反応にこっちまで釣られてドキッとしてしまう。

「好きな人……ですか……」

愛菜の瞳が切なそうに揺れた。期待が俺の胸を熱くする。

気のせいか? 気のせいじゃないよな? 俺だろ? 俺のことが好きなんだろ? 『オソマツさんが忘れられない』そうなんだろ? そうって言ってくれよ。

「「…………」」 

俺たちは無言で見つめ合った。


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