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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第35章 水とワイン/Água e Vinho【おそ松/マフィア松】


「今日は警察があとをつけてるみたいでさ。あんまりよくないだろ? 市長選候補者の婚約者がマフィアと通じてるなんてさ」

「でもオソマツさんは、市長さんと仲いいですよね? 似たようなものでしょ?」
愛菜はのんびりと微笑む。あまり深刻には捉えていないらしい。大丈夫か?

「あれは仲いいっていうか……え、愛菜には俺と市長が仲良しのオトモダチに見えてたの?」 

「違うんですか? 古くからのご友人なんですよね? なのに、私を庇って喧嘩させてしまって……。本当にすみませんでした……」

「…………」

俺と市長が『ご友人』か。おめでたい発想だ。

やっぱり愛菜の見ている世界は違う。彼女の前に広がるのはすべてが美しく澄んだ世界。

一方、俺たちが住みついているのは、コネに生かされ、コネに殺されるドブの底。のしあがるのも、突き落とされるのも一瞬の腐った場所だ。

「オソマツさん? 私、何か変なこと言っちゃいましたか?」

「いや……」
俺は鼻の下を擦りながら苦笑いした。
「なんでもない。立ち話もなんだし、俺の部屋に行こうか。何か飲むだろ?」

部屋に案内して部下にエスプレッソを持ってこさせる。

愛菜は椅子に腰を下ろすと、バッグの中から紙包みを出した。

「さっき市長さんの事務所に行ってきたんです。ちゃんとお給料をもらえました。ありがとうございました」

「そっか、よかったじゃん!」

「それでこれはオソマツさんに……」

紙包みを差し出す愛菜。

「へ? なんで?」

「スーツのクリーニング代にもならない額で申し訳ないですが……」

「は!? いいって! スーツならまだいろいろ持ってるしさ! 愛菜が働いた金だろ? もらえないって!」

紙包みを押し戻すと、指先が愛菜の手に触れた。それだけで胸がざわつく。

俺は乙女か? 情けない。

「でも……」

「もう充分返してもらったって! 昨日、車の中で」

「っ!」
愛菜の顔がみるみる赤くなった。


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