第35章 水とワイン/Água e Vinho【おそ松/マフィア松】
「だ、抱かれっ……!?」
オソマツさんの顔がぐっと近づいた。温かい息から微かに感じる甘い香り。たぶんさっき飲んでいたバローロの香りだ。
「俺、ちょっと酔ってるかもな……」
至近距離で目が合った。
「っ……!」
熱っぽくて、せつなげで、でも少し甘えたようなその瞳。
心臓を射抜かれた気がして、私は息を呑んだ。
オソマツさんの背中越しに見える街灯がゆっくりと通り過ぎていく。白い光が目に染みた。
「愛菜……」
オソマツさんが目を瞑る。
唇に温かく柔らかいものが触れた。
「ん……」
オソマツさんが私の後頭部に手を回す。力強く引き寄せられ、ますます押しつけられる唇。
バランスを崩せば、シートからずり落ちてしまいそうだ。私はオソマツさんの袖を掴んだ。
「っ……んぅっ……ん……」
オソマツさんの舌が口内に潜り込んでくる。ジュルと唾液が溢れ、吸いながら舌を絡め合う。
こんなこと、していちゃいけない……。
そう思ったところで、私にはやめ方なんてわからなかった。
オソマツさんの熱く求めるような力強いキスが、あっという間に理性を溶かしてしまう。
「んっ……ぅ……ンッ、ふ……ぅんっ……ん……」
快感が私を包み、とろりと芳醇なワインが脳の中で溢れる。夢中になって味わうと、時間が永遠に止まってしまいそうな錯覚に陥った。
「っ……はぁっ……愛菜っ……もっと……」
一旦離れた唇がまた荒々しく押しつけられる。カタンと音がして、足元に転がるワインボトル。オソマツさんの手が胸元に下りてきた。
「んぅっ……!」
ドレスの上から膨らみを鷲掴みにされる。オソマツさんはキスを繰り返しながら揉みしだいた。
ここ、外だよね? 車に乗っているといっても、屋根もないし丸見えだ。
かろうじて残った理性が必死に警告を発する。
こんなことをしてはいけない。もし知り合いや身内に見られてしまったら大変なことになる。
「っ……愛菜っ……俺のも……少しだけ……」
オソマツさんが私の手を優しく自身の股間に誘導した。
「だ、だめですっ……私……」
「なんで? イヤなの?」
「イヤではない……ですけど……でもっ……」
引こうとした瞬間、オソマツさんの硬いものに手の甲が当たった。