第7章 ハロウィンナイトは危険なあなたと【十四松】
十四松が悲しそうに顔を歪ませる。
「ぼく、ずっと我慢してたんだよ? 愛菜ちゃんのことが好きだから、ずっと一緒にいたかったから、どんなに血が欲しくても正体を出さないようにしてたんだ……」
「正体……?」
十四松がまた一歩前に踏み出した。
「でも、あんなに可愛いこと言われたら、もう我慢できなくなっちゃった。本当はね、ヴァンパイアは人間の女の子を好きになっちゃいけないんだけど……ぼく、愛菜ちゃんのことが好きだよ。愛菜ちゃんが欲しい……」
(ヴァンパイア? 吸血鬼ってこと? 十四松くんが? 嘘でしょ……)
愛菜は、混乱しながらまた後ろへ下がろうとする。でも、下がろうとしたのは頭の中だけのことで、実際は体が全く動かなかった。
十四松は、一歩また一歩愛菜に近づいていく。
「ねぇ、愛菜ちゃん……」
「あ……い、いや……来ないで……」
十四松は、愛菜の前に立つとマントを翻し、彼女の腰に手を回した。
「大好きだよ……」
優しく囁くと、愛菜の顔をじっと覗き込む。一度見つめたら永遠に閉じ込められてしまいそうに妖艶に光る瞳。
「あ……」
体が痺れて動かなくなる。