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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第35章 水とワイン/Água e Vinho【おそ松/マフィア松】


オソマツさんが振り返る。
「だからさ〜、あげるって言ってんじゃん。ネックレスもドレスも持っててよ」

「で、でも、こんな素敵なドレス、着る機会がないですし」

「んじゃ、俺とまた食事でもする? そのとき着てくれたらいいじゃん。似合ってるって! すっげぇ可愛いよ!」

「っ……」

なんでそんな子供みたいに無邪気に笑うの? マフィアのくせに。いい人なのか悪い人なのかよくわからない。完全な悪人なら近づかなければいいだけだ。でも、そうじゃないから混乱してしまう。

「どした? 行くぞ?」
オソマツさんに手を引かれて玄関を出る。外はもう真っ暗。周りを見回すと、高級住宅が立ち並んでいた。

なんとなく場所はわかる。今日の会合があった会場からそんなに遠くはない。

「あ、階段になってるから気をつけて」

私を気遣って、玄関前の石段をゆっくりと下りてくれるオソマツさん。

私もうなずいて一歩踏み出した瞬間、

「おっ! マツノさん!」

聞き覚えのある声が通りに響いた。

「あー、市長さん。何? 今帰り?」

オソマツさんの言葉に顔を上げると、目の前には市長が立っていた。

「ああ、ゲストを駅まで送っていったところでね……って、君! こんなところにいたのか!」

市長の視線がオソマツさんから私に移った。

「はい、あの――」

「君! マツノさんのスーツを汚したんだって!? 大切なゲストになんてことをしてくれたんだ! しかも仕事の途中で会場からいなくなったそうじゃないか! 臨時に雇ったとはいえ、そんな態度じゃ許さんぞ!」

そうだった。すっかり忘れてたけど、給仕の仕事は夜まで契約していたんだった。仕事を放って途中で帰ってしまったことになっていたのか……。

「まあまあ、そんな怒んないでくださいよぉ。ぶつかったのは俺だしさ。倒れてたから俺が連れて帰っちゃっただけだから」
オソマツさんがヘラヘラ笑いながらフォローしてくれる。

「いや、庇わなくていいですよ、マツノさん。やはり学のない女は仕事に対して意識も低い。雇った私が馬鹿でした。どうせ今日だって、はなから仕事なんてする気もなかったに違いない。金持ちの男を見つけに来ていたんですよ。君! 今日の給料は払わんからな!」

気に障ったのか余計にヒートアップする市長。


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