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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第35章 水とワイン/Água e Vinho【おそ松/マフィア松】


俺は新しいグラスを取り、ゆっくりと回した。濃厚なワインの香りが匂い立つ。上品というよりは、粗野で野生的な香りだ。どこの裏ルートから仕入れてきたか知らないが、これはこれで悪くない。

「……いいですよ。要はその候補者を辞退に追い込めばいいんでしょ? うちの次男か三男にやらせますよ。ま、俺らはまっとうな組織なんでね。物騒なことはせず、スマートに話し合いで解決しますよぉ」

ただし、ギリギリのラインでの『お話し合い』だがな。命だけは保証する。逆にいえば、それ以外の保証はできないってことだ。

「よかった! マツノさんが動いてくれるなら間違いないですよ!」
安心したのか、市長はホッとしたように頬を緩ませた。

まあな。でも本題はここからだ。

俺はグラスをテーブルに置いた。

「なあ、市長さん。実はこちらもひとつ困っていることがあるんだよね」

「ほう……なんでしょう?」
市長の瞳が怪しく光る。

「最近、俺たち一家がワインの密造をしていると噂になっててさ」

市長が俺の顔を見直した。なるほど、と目が言っている。
「このご時世ですからな。アメリカのほうでは禁酒法が施行されたと聞きますし、こちらでもうまくやればかなりの高値でさばけそうだ。マツノさん、また大儲けですか?」

「いーやいやいやいや! やめてよぉ! 俺たちがやっちゃってるみたいな言い方!」

市長がいやらしく口角を上げた。
「では、やっていないんですか?」

「…………」

ったく、くだらない質問しやがって。密造をやってるかやってないかなんて、どうでもいいんだよ。重要なのは、おまえが俺の役に立ってくれるかどうかだ。

市長は何かを悟ったのか突然笑い出した。
「ハハハ、分かってますよ、マツノさん。余計なことは言いません。で、私は何をすればいいんです?」

「とにかく警察連中がうるさくてさ。俺たちの周辺を嗅ぎ回ってんだよね。黙らせるのは簡単だが、俺たちが下手に手を出せば面倒なことになりそうだろ?」

「なるほど……。できるだけ手を汚さずにコバエの駆除をしたい、とおっしゃるんですね?」
市長はフフンと鼻を鳴らした。


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