第7章 ハロウィンナイトは危険なあなたと【十四松】
「お菓子くれなかったら、イタズラしてもいいんだよね……?」
「じゅ、十四松くん……?」
ゾクリと鳥肌が立つ。愛菜は、本能的に危険を感じ、十四松から体を離した。
(何? どうしたの? 十四松くん?)
十四松は、相変わらず顔を上げない。アイドリングのエンジン音だけが車内に低く響き続ける。
「ねぇ、愛菜ちゃん……ハロウィンってモンスターの仮装するんだよね……?」
「は……?」
(何? 何の話をしているの?)
得体の知れない恐怖が徐々に湧き上がってくる。暑くもないのに額に汗が滲む。
「それってさ、本物のモンスターなら、仮装はしなくていいのかな……?」
十四松がゆっくりと顔を上げ、愛菜を見た。
「っ!!」
愛菜は息を呑む。
青白い顔、血走った目、口からはみ出す2本の鋭い牙。
「きゃあっ!」
愛菜は、悲鳴を上げた。
「イタズラしてもいいなら、愛菜ちゃんの血を飲みたいな……」
十四松がニヤリと笑う。
「い、いやっ!」
愛菜は、シートベルトを慌てて外すと、ドアを開け、無我夢中で外へと飛び出した。勢い良く降りたせいで足がもつれる。
(転んじゃだめ! 逃げなきゃ!)
考えている余裕はない。愛菜は、なんとか体勢を立て直すと、そのまま山道を走り出した。