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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第34章 イジワル上司の松野さん【トド松】


そっか。助かったんだ……。

すぐに松野さんがハッとして、私から離れる。

「だ、大丈夫ですよ! 奥田くんが怖がっていたので慰めていただけです。ね? 奥田くん?」
スーツを直しながら立ち上がった。

「あ……は、はいっ!」

「本当に大丈夫ダスか? 二人とも顔が赤いダスよ。中が熱かったダスね? 熱中症になっていないダスか?」
デカパン課長が心配そうに小さな目を瞬かせる。

カメラもないし、中で何をしていたかなんてバレはしないだろう。けど、なんとなくうしろめたい。

私は曖昧に微笑んだ。

「開いてよかったです。ありがとうございます」

「怖かったダスね。すまないダス! 電気系統のトラブルがあったらしくて、緊急停止してしまったダス。今、復旧したところダスよ。巻き込んでしまって申し訳なかったダス」

松野さんが爽やかに微笑む。
「気にしないでください。大したことじゃないですから」

「さすが松野さんはこういうときも落ち着いてるダス! とにかく無事でよかったダス!」

やっぱりバレてはいない。よかった……。

私は見つからないようにホッと小さく息を吐いた。

「じゃあ、ボクたちは社に戻りますので、これで失礼します。奥田くん、行くよ」
松野さんが振り返る。

「はい」
私もうなずいて鞄を拾った。

「大丈夫ダスか? 少し休んでいったらどうダス? 心配ダス」

「ありがとうございます。でも、このあと用がありますので社に戻ります。またご連絡差し上げます」

松野さんは私の手を強引に掴むと、玄関に向かって歩き出した。私もデカパン課長に会釈してついていく。

二人は足早にダヨーン重工を出た。さっきまで暗闇にいたから日の光が眩しい。

「「…………」」

松野さんは何も言わなかった。ただ黙って駅に向かってズンズンと歩いていく。私も特に声は出さず従った。

たぶん考えていることは同じだ。

松野さんが私の手を強く握った。私も握り返す。

「奥田くん……」

「はい」

「その……疲れちゃって……。社に戻る前にちょっと休憩してもいいかな?」

手のひらが汗で濡れて滑るのがわかる。私は松野さんの手を握り直した。


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