第34章 イジワル上司の松野さん【トド松】
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「「このたびは誠に申し訳ありませんでした!」」
話し合いを終え、改めてもう一度松野さんと二人で頭を下げる。
ダヨーン重工株式会社のデカパン課長は笑いながら、私たちの肩を叩いた。
「ホエホエ〜そんなに何回も謝らなくても大丈夫ダス。気にしないでいいダスよ。わざわざ来てくれたおかげで話もうまく纏まったダス。優秀な新人が入ってよかったダスな、松野さん?」
デカパン課長が松野さんに目配せする。
「あ……はい。ありがとうございます。このたびは失礼いたしました。次からはミスがないように気をつけますので」
「そんなに硬くならなくていいダスよ〜。またよろしくダス」
挨拶をして応接室を出ると、松野さんは大きく息を吐いた。
「ふぅ、なんとか話がいい方向に纏まってよかったよ」
「松野さん、すみませんでした……」
「本当にね。あんなひと目でわかるようなミスする? ちゃんと確認しながらやったんだよね? もしかして適当にやった?」
「そ、そんなっ! 適当になんてやってません!」
松野さんはさっさとエレベーターに向かって歩き出した。
「今回は相手が優しかったからまだよかったけど、他の会社なら契約を切られてたかもしれないからね。そうなったらすっごい損失だよ? 自覚ある?」
「は、はい……」
松野さんのあとを追いながら、改めて社内を見回す。うちの会社の古いビルとは違い、広々として明るいフロア。廊下でさえ、優雅に花と絵画がいくつも飾られている。さすがは大企業。たしかにこんな大手との契約が切られたらまずいのはわかる。
「ったく、これだから新入社員は困るんだよね〜。どうせちょっと強く注意すればすぐに来なくなるんでしょ? 仕事なめてるよね」
「わっ、私はそんな無責任なことしません……!」
「ふーん、どうだか」
松野さんはエレベーターのボタンを押した。私も黙って松野さんの横に並ぶ。
ミスしたのはたしかに私が悪い。でもそこまでいわなくてもいいのに。すぐに辞めると決めつけられているのも腹が立つ。
松野さんって仕事はできるけど、本当にイヤなやつ……。