第7章 ハロウィンナイトは危険なあなたと【十四松】
「えー? えーっと、何の日だっけ!」
愛菜がクスクスと笑う。
「今日はハロウィンなんだよ! ほら、仮装してる人を見かけたでしょ?」
「あーそういえば……」
確かにモンスターの格好をしている人をちらほら見た気がする……。
「ねぇ、十四松くん! お菓子は?」
「え? え? お菓子?」
急に言われて十四松は慌てる。
愛菜は、身を乗り出すと、十四松の耳に顔を近づけ囁いた。
「トリック・オア・トリート! お菓子くれなきゃイタズラしちゃうゾ」
(えーーーー!!!!)
うっかりハンドルを滑らしてしまいそうになる。
(なにこれー! 可愛い! 可愛いよー! お菓子あげないから愛菜ちゃんにイタズラされたいよー!)
「なーんてねっ!」
愛菜が無邪気に笑う。
(愛菜ちゃん、ずるいよ……。ぼく、余計に帰りたくなくなっちゃう)
十四松は横目で愛菜を盗み見ながら、ウインカーを出した――。
…………
「ねぇ、十四松くん、もしかして迷ってない?」
愛菜が不安そうに声を出した。
あれから1時間後。山道に入ってから、全く抜ける気配がない。むしろ進めば進むほど、山が深くなっていっている気さえする。
「そうかも……」
十四松も困ったように辺りを見回した。