第33章 青春性愛ストロベリー【一松/えいが松】
「ちっ、違うよっ。本当に……おれがっ……全部……悪い……。奥田に……素直に……いえなかったから……。ごめん……」
松野くんも泣いていた。たぶん彼の涙を見たのははじめてだと思う。
「っ……松野くんっ……」
どちらからなんて、わからない。
気づいたら私は松野くんの腕の中にいた。彼にしがみついて、暖かい胸に顔を押し付ける。紫のパーカーが私の涙で濡れていった。松野くんもぎゅっと強く抱きしめてくれる。
「奥田……泣かないで……」
「松野くんだって……泣いてるじゃん……」
「おれはいい……。どうせゴミクズだし……」
「何それ……」
顔を上げると、すぐ近くに松野くんの顔があった。さっきは感情の見えなかった瞳に今は優しい光が灯っている。
「奥田……本当におれのこと好きだったの?」
「うん。本当だよ……。松野くんは? もしあの頃告白したら私のこと振ってた?」
松野くんがふっと穏やかに微笑んだ。
「そんなわけない……。おれも奥田のこと好きだった。ずっといえなかったけど……」
嬉しい。
私は松野くんの胸にまた顔を埋めた。
「もしかしてあの頃、両想いだったのかな?」
「たぶん」
「告白しておけばよかった」
「うん。でも今できたから……」
松野くんが私の髪を優しく撫でてくれる。なんだろう。すごく心地よくてホッとする。
「ねぇ、松野くん」
「うん?」
「今は? もう他に好きな人できた? 彼女いるの? もしかして結婚してる?」
頭の上で松野くんが苦笑する気配があった。
「結婚どころか彼女なんていたことないんだけど。おれ、今でも奥田が好きだし……」
私は再び顔を上げた。松野くんと目が合う。涙は止まっていたけれど、瞳は赤く腫れていた。
「私も。今も松野くんが好き」
「奥田……」
松野くんが膝を曲げるのがわかった。少し右に傾けた顔が近づく。私もつま先で立って背伸びする。目を瞑った瞬間、ふたりの唇が触れあった。