第33章 青春性愛ストロベリー【一松/えいが松】
「でも、あの二人はどうなるの!? まだ仲直りしてないよ?」
私はうしろを振り返った。遠ざかる公園もグニャグニャと形を変え、もう中にいる人の姿は確認できない。
「あそこまで話せば大丈夫だろ。見届けなくてもあいつらならうまくいく!」
大きくうねる地面に転びそうになりながら、私たちは走った。道行く人たちもみんな顔が崩れ、建物までも伸びたり縮んだりしている。
どこをどう走ったのかはよくわからない。やがて、少しずつ歪みはおさまってきた。
「っ……」
息を切らしながら走るのをやめる。また元の少しだけズレた世界に戻っていた。車がスムーズに流れ出し、何事もなかったかのように人々が歩き始める。
「今のは私たちのせいなの……?」
私は周りを見回した。まだ息が荒い。
「たぶん……」
松野くんも肩で息をしながらうなずいた。
「そっか……」
無意識に手をついていたのが、石の門だと気づく。私は目の前の建物を見上げた。
「学校まで来てたな……」
ぽつりと呟く松野くん。
知らず知らずのうちに私たちが卒業した赤塚高校に着いていた。懐かしい。生徒はほとんど下校してしまったらしく、人は見当たらない。
松野くんは私の手を引っ張った。
「行こう……」
「行こうって? どこへ?」
「学校の中」
「でも、いいの!?」
「残ってる先生たちに見つからなきゃ大丈夫だろ……」
私たちは静かに校庭を横切り、校舎の中に入った。誰かが職員室から出てくる気配はない。靴を脱ぎ、下駄箱の横の階段をのぼる。二人の足音がやけに大きく響いた。
「私たちの教室ってたしかこの階だったよね」
手を繋いだまま、廊下を歩く。
そういえば、よく松野おそ松くんがこの廊下で女子のスカートめくりをしてたなぁ。おそ松くんとも同じクラスだったから覚えている。
「何、笑ってんの……?」
松野くんが不思議そうに私を見た。
「ちょっと松野おそ松くんのこと思い出しちゃって」
「おそ松兄さん? なんで……?」
「私もスカートめくられたことあったな〜って」