第33章 青春性愛ストロベリー【一松/えいが松】
え?
どこの席にいた客なのか、駆け寄ってきた女性が奥田たちの腕を掴む。
「喧嘩しないで! 本当は仲良くしたいんでしょ!?」
高校生の二人は女性を見てギョッと目を見開いた。
「えっ、だ、誰? えっ? 同じ顔っ……」
奥田が驚いて後ずさる。グチャと音がして、イチゴが踏み潰された。
18歳のおれもポカンと腑抜けた表情で女性を見つめている。
「お、おい! おまえら、喧嘩はやめろよ! 店に迷惑だろっ……」
振り向いてしまって引っ込みがつかなくなったおれも二人の正面に回った。
「えっ、はっ、えっ……!? え!? お、おれ? え!?」
こっちを向いた18歳のおれがさらに目をむく。奥田もハッと息を呑んだ。
チッ、おれってば、なんでこんな面倒くさいことに顔を突っ込むんだ。高校生たちにどうやって説明する? 『大人のおれだよ』? そんなもん信じるか?
そのとき、二人の腕を掴んでいた女性が「あっ!」と小さく叫んだ。
「松野……くん?」
声が震えている。
「へ?」
おれも女性の顔を見て、ようやく異常事態に気づいた。
奥田? なんで? 奥田がふたり?
目の前にいた女性は化粧をして大人びていたが、明らかに奥田だった。
テーブルの上に広がった紅茶が机の角からポタポタと床に落ちる。
高校生のおれ。大人のおれ。高校生の奥田。そしてもう一人、大人の奥田。
四人は呆然と互いを見つめ合った。
「な、何これ? 意味わかんない……」
18歳の奥田が怯えた表情で席から離れようとする。
またイチゴを踏んでしまい、彼女は慌てて足を上げた。白い床に広がる赤い染み。さらに潰れた無残なイチゴ。
数分前まで奥田が嬉しそうに口に運んでいたのに。おれが変なことを言い出さなければ、いい思い出で終わるはずだったのに……。
「お客様、大丈夫ですか? 床を拭きますね!」
店員が雑巾を持って走ってきた。
周りの客たちの視線が痛い。
「と、とりあえず出よう……」
絞り出した声はカラカラに乾いていて、まるでおれの声じゃないみたいだった。