第33章 青春性愛ストロベリー【一松/えいが松】
「いつもと違う? そうだろうね。でもこれが本当のおれなんだよ」
「松野くん……?」
「どうせ奥田は進路決まって余裕だから、おれを毎日誘うんだろ? それって同情? 憐れみ? こっちはこのままニートになりそうなのに」
ずっと我慢していたせいなのか、本来の卑屈な自分が出てしまっている。
「えっ……嫌ならそういってくれれば……」
戸惑う奥田。
「嫌ではないけど、奥田に付き合うのって大変だよね。こんな可愛い店、おれには敷居が高いし。それより、とにかく考え直したら? 不二大学よくないって噂だし」
「噂? 変なこといわないでよ!」
奥田の声が少し大きくなった。
「本当のことじゃん。大学決まって無邪気に喜んで。みんな迷惑してるよ。わからないの?」
やめろ、おれ。やめてくれ。それ以上いうな。寂しいんだろ? やりきれないんだろ? そんないい方じゃ伝わるはずがない。
奥田が立ち上がった。
「は!? だったら迷惑っていえばいいでしょ!? 進路決まってないのは、松野くんがちゃんとしてないからじゃん! いっつもみんなに合わせてヘラヘラして! 全然本音もいわないし!」
「はあ? おれがいつヘラヘラしてた?」
18歳のおれがテーブルをコツコツと指で叩く。かなり苛ついているのがわかる。
「いつもだよ! 柳田くんたちの前では自分の考えもいえないんでしょ!? 流されてるよね? 見たらわかるよ! 不自然だもん!」
「不自然? ノリよく仲良くやってるよ。あんたに何がわかる?」
「わかるよ! 本当は自分に自信ないくせに! 進路だって諦めずに頑張ればいいのに!」
痛いところズバリ。そのとおりだ。
「おれ、もう帰る」
18歳のおれが勢いよく立ち上がった。弾みで紅茶の入ったカップが倒れる。
「「っ!」」
反射的にカップを戻そうと同時に手を伸ばす二人。ぶつかって、はねのけられた奥田の手が今度は皿に当たった。
「あっ!」
ケーキごとガチャンと床に落ちる。飛び散る真っ赤なイチゴ。
だめだ。見てられない。
おれは思わず立ち上がり、振り返った。
「おいっ! おまえら! やめろっ!」
その瞬間、
「二人ともやめて!」
女性の声が重なった。