第33章 青春性愛ストロベリー【一松/えいが松】
また無理してるだろ、18歳のおれ! 甘いものは普通に好きだけど、よく堂々と頼めたな。こんなスイーツはもっと高いステージにいる人間様の食べ物なんだよ!
奇声をあげたいのをぐっと堪えて、おれはカップをテーブルに置いた。
二人は「おいしいね」なんて言い合いながら、仲睦まじくケーキを食べている。傍から見たら、微笑ましい高校生カップルだ。
でも、おれたちはただの友達だし、おまけにこのあと険悪な雰囲気になる。
ドキドキする……。見たくない……。もう店を出ようか……。
そのとき、フォークを置く音がした。
「あのさ、奥田……」
18歳のおれ。声に緊張が混じっているのがわかる。
きた……。
おれはゴクッと喉を鳴らした。
「どうしたの?」
奥田はまだイチゴタルトを食べる手を止めていない。
「奥田って、不二大学に行くんだよね?」
「うん! そうだよ!」
「それさぁ、やめたら……?」
「え?」
空気が止まった気がした。
おれはマスクを下にずらした。いつの間にか顔にびっしりと汗をかいている。
「やめなよ。近くの大学に行けばいいじゃん」
「えっ、でも近くの大学は受けてないし……」
「じゃあ、浪人したら?」
「え……な、なんで……?」
奥田の驚いた声。
なんでこんな変なことをいったのか、おれはわかっている。
奥田と離れたくないからだ。
でも、18歳のおれが素直にその気持ちをいえるはずもない。
「おれなんか、まだ進路決まってないよ?」
「それは関係ないでしょ?」
「へぇ〜、自慢ですか? 自分だけ進路決まって、いつも楽しそうに話しやがって。おれのこと、バカにしてる?」
「えっ……バカになんてしてないよ。松野くん、どうしたの? いつもとなんか違う……」
奥田の不安そうな声。
ああ、18歳のおれのバカ。違うだろ? 本当はそんなこと、いうつもりなかっただろ? 奥田がバカになんてしていないのは、ちゃんとわかっている。