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《おそ松さん》クズでニートな君が好き(R18)

第33章 青春性愛ストロベリー【一松/えいが松】


「怒ってる? 私のこと……」

「は? なんで?」
よくわからないという表情で目を丸くする彼。

「だ、だって私たち、卒業式の前に……」

「卒業式? ああ、もうすぐ卒業式だよね。奥田は進路決まってるからいいよね。おれは全然」

もうすぐ卒業式? そっか。あの喧嘩は『まだ』この世界では起こってないんだ……。

私はさらにうしろに下がった。
「ごめんね、松野くん。私、もう帰らないと……」

「え!? なんで?」

「ほ、本当にごめん!」
私は走り出した。

「奥田!? どうしたの!?」

驚いたような松野くんの声が胸に刺さる。

怖い。

これ以上喋ったら、また松野くんと喧嘩してしまうかもしれない。何より大人の私だとバレてしまいそう。

「っ……」

無茶苦茶に走って、いつの間にか見覚えのある場所に来ていた。

茶色の壁に赤い屋根の家。私の実家だ。

大学に進学して家を出てから何年経つんだっけ。卒業後、そのまま就職した私はずっと一人暮らしを続けている。

思わずフラフラと家のドアに手をかけたとき、うしろから喋り声が聞こえた。

まずい。

我に返って咄嗟に庭の茂みに隠れる。そっと様子を伺っていると、やがて楽しそうに笑い合う男女が現れた。

「っ!」
女性の顔を見て、私は息を呑んだ。

私だ……。私がいる……!

高校の制服を着た私。その隣には松野くん。さっき会った松野くんは制服姿だったのに、いつの間にか紫のパーカーを着ている。髪も跳ねているし、さっきよりも猫背になっているような……??

「じゃあね、送ってくれてありがとう、松野くん」

高校生の私がにっこりと微笑んだ。

「あ……う、うん……」
松野くんはぎこちなくうなずく。

「あ、そうだ。明日の約束、覚えてる?」

「え? 約束?」

「もう〜忘れないでよ! ケーキ食べに行くんでしょ? 駅前に新しくできたお店! パティスリー・アカツカだっけ? 卒業する前に行っておこうって話だったでしょ?」


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