第32章 咲き乱れよ愛慾の長春花【逆ハー/三国志松】
「あなたたち、仮にも国を動かしている身でしょう? 志が低すぎない!?」
六人がキョトンと目を丸くした。『何いっているんだ、この女は』という表情だ。こっちがいいたいくらいなんだけど。
「志が低い? うん。低いよ」
おそ松帝がうなずく。
「即答!? そ、そんな適当でいいの!? 敵国が攻めてきたらどうするつもり!?」
「こんなちっぽけな国、攻めてもなんの得もありませんよ。財政は最悪。地の利もない。優秀な人材もいませんからね。攻めるだけ兵力の無駄づかいでしょう」
チョロ松が答える。
「で、でもっ! 民から反乱を起こされる可能性だってあるでしょう!? 20年以上前に各地で反乱が起きたじゃない! 小さかった私だって覚えている! あのとき反乱を起こしたのは、たしか太平道信者の農民たちだった! 求心力のある教祖が一人いれば、焚きつけられた民たちは奮起するのよ!?」
おそ松帝が首を振った。
「いや〜、反乱はないだろ。まず国民がいないしさぁ。自家発電を司る文官がクーデター起こす可能性はあるけど。な、チョロ松?」
「はあ!? 別にそんなもん司ってねーよっ!」
帝と文官の呑気なやり取り。私はふと父・曹操の話を思い出した。
『戦で負傷し逃げていた途中で不思議な六人に助けられてな……。フザケたやつらだったが、もしかしたら彼らのような男たちが天下を太平に導くのかもしれん……』
まさか父のいっていた不思議な六人って……。
「なぁなぁ、おねーさん! これからエッロいことするってときに、そんな難しい顔すんなよ〜。萎えちゃうじゃん。天下とかどーでもいいよ。朕たちはおねーさんにも楽しんでほしいんだけど」
おそ松帝が私を覗き込んだ。
「だね。いくら天下取っても、人生楽しめなかったら元も子もないから」
トド松が肩をすくめる。