第32章 咲き乱れよ愛慾の長春花【逆ハー/三国志松】
「そそそそその……揉むっていうのは何かと準備が必要ですよね? 必要だと聞き及んでおりますよ? ですから、こう……準備ができ次第、メチャクチャに揉んでやりますよ。ねぇ、帝?」
「ぐはっ!! 朕の番!? 一周回ってきた!?」
私は慌てる三人を呆れながら見つめた。
何なの? 何が目的なの? こいつら、あまりにも度胸なさすぎない? それとも、もしかして……。
私は静かに口を開いた。
「あなたたち……まさかとは思いますが……もしかして……童貞?」
「「「っ!!」」」
三人が動きを止める。
やはり……。
「なっ、なんだよ、その見下すような目! ど、童貞じゃねぇし! すんごいヤッてるし!」
おそ松帝が必死に訴えてくる。
「本当ですか?」
嘘なのは明らかだ。
おそ松帝は何度も頷く。
「本当だって! な、カラ松?」
「お……おお! 我らは童貞ではないぞ! なぁ、チェリ松?」
「いや、チェリ松っていっちゃったよ!」
バカみたい。どんな国かと思って来てみれば、情けない童貞男が三人いるだけ。父の天下取りの邪魔にならないかと心配したけれど、杞憂だったようだ。
「承知しました。童貞なんですね。無理に揉んでいただかなくても、けっこうです」
きっぱりというと、三人とも困ったように顔を見合わせた。
「あの〜朕たちはおっぱい揉みたいんだけど……」
「お断りします! 早く縄をほどいてください! 国に帰らせていただきますので!」
強く出てみると、案の定、どうしたらいいのかわからなくなったらしい。カラ松がオドオドしながら縄をほどいてくれた。
よかった。なんとか逃げられそう。
「ほほほほ本当に帰っちゃうんですか? せせせせっかくキレイな女性が我が国に来てくれたのに……。淋しいんですが……」
チョロ松が泣きそうな顔をしている。
「ええ、帰ります。勘違いしたことは陳謝します。失礼しました。では」
やっとこの変な国ともおさらばできる。
踵を返し、歩き出した瞬間、何かが私の足元をすばやく駆け抜けた。
「っ!?」
痛みが走る。屈んでみると、右足には動物に噛まれたような痕。血も出ていた。
「何これ……」
そのとき、背後に何者かの気配を感じた。