第32章 咲き乱れよ愛慾の長春花【逆ハー/三国志松】

「おい、チョロ松っっ！！　さっさと出てくるんだ！」
カラ松に促され、文官は腰を屈めながら姿を現した。

「なあ文官、おまえ、なんで股間押さえてんの？」
おそ松帝が呆れたようにため息をつく。

文官は帝の言葉を無視して、私にぎこちなく微笑みかけてきた。

「おおおおお美しい方ですね。女性を見るのは久しぶりです。どどどどどどどちらの国からいらしたんです？」

鼻息が荒い。

私は少し警戒しつつも「魏です……」と答えた。

「ぎ？　はて、そのような国は存じあげませんね。有名な国なのですか？」

「一応……」

他国の者と出会う機会はたまにあるが、『魏を知らない』という人間には出会ったことがない。だからこそ油断していた。まだ我らの国を知らぬ者もいるのだ。

『井の内の蛙大海を知らず』とはよくいったもの。私としたことが驕るとは情けない……。

おそ松帝が私とチョロ松のあいだに割って入った。
「なんか聞いたことある気もするけど、国の名前なんてどうでもいいから！　とにかくこのおねーさんは朕とエッロいことする予定なの！」

「エエエエエエッロいこと！？　ぐふっ！！」

チョロ松が今度は鼻を押さえる。指のあいだから血がしたたり落ちた。

「きゃあっ！？　流血してますよ！？」

思わず叫ぶと、おそ松帝がハイハイと手を振る。

「大丈夫。こいつ、メンタルは永遠の思春期だから。エロいという言葉だけですぐに鼻血出しちゃうだけ。気にしなくていいよ。いつもこんな感じ〜」

「は、はぁ……」

おそ松帝は私の顔を覗き込んだ。
「そんなことよりさぁ、おねーさん早速イイことしよっか？　とりあえず朕たち三人と一緒に」

「は！？　ぜ、絶対に嫌です！　無礼にもほどがあります！」

身体を動かしても縄は手首や足首にしっかりと食い込む。

おそ松帝は私の顎をクイと持ち上げた。
「だからぁ、おねーさん、自分の立場わかってないね？　本当だったら侵入者は殺しちゃうところだよぉ？」

「っ……」

「お、やっとわかった？　んじゃ、おっぱい揉んじゃおっかな〜」
おそ松帝は私の胸の前で両手をいやらしく動かしてみせた。