第31章 きれいきれいしましょう【カラ松】
「あああっ! だめっ! もう……イク! イっちゃう!」
次の瞬間、カラ松くんがスッと離れた。私は息を切らしながら、目を開ける。
「ま、また……なんで……」
本当にもう少しでイキそうだったのに……。
淋しそうな瞳と視線がぶつかった。
「ハニー、答えてくれないのか? どうしてオレを捨てる? オレはこんなにもおまえを愛しているのに……」
「…………」
タイルを打つシャワーの音が広いバスルームに響く。
私は震えながら、口を開いた。
「だって、カラ松くんがあまりにも束縛するから……」
「束縛? なんのことだ?」
「なんのことって……。私の友達みんなに『もう愛菜には連絡しないでくれ』って勝手に言ったんでしょう? しかも仕事先にまで電話をかけて、男の従業員は私と話すなって言ったり。どこに出掛けるにも、何を買うにもカラ松くんに報告しないといけないし。嫌いになったわけじゃないけど……もう疲れちゃったよ……」
カラ松くんの瞳が揺れる。
「なぜだ? すべて心配だからやっただけだ。愛菜のことを想って――」
「それが重いんだってば!」
私は叫んだ。
「カラ松くん、私の話はいつも全然聞いてくれなかったじゃん! 会社の飲み会で遅くなったときだって、友達や上司の家に勝手に乗り込んで酷いことを言って! そんなことする必要ないでしょ!?」
「それは愛菜がきちんと電話に出なかったからだろう?」
「飲み会でみんなと喋ってたらそんな頻繁に電話なんか出られないよね!? 数分おきにかけてくるから、いい加減出るのやめたんだよ! うざかったもん!」
「うざかった?」
カラ松くんの口調が変わる。
私はハッと口をつぐんだ。
しまった。言い過ぎた。
「と……とにかく……それは終わったことだからいいけど……わ、私たち……もう別れたんだから……」
カラ松くんが再び私の太腿を掴んだ。さっきまでの淋しそうな表情は消え、瞳は冷たく光っている。ゾクリと恐怖が背中を駆け上がった。