第30章 熱帯夜【逆ハー】
チョロ松さんはおもむろに履いていた海水パンツをおろした。
「チョロ松!?」
「チョロ松兄さん!?」
「チョロ松さん!?」
みんな一斉に叫ぶ。
彼は全く動じずに海パンを投げ捨てると、股間のものを握った。すでに大きくなっている。
「ちょっとチョロ松さん! 何をやってるんですか!? やめてください!」
私の言葉には一切耳を貸さず、チョロ松さんは手を動かしはじめた。
これも花のせいなの!?
「一松さん、チョロ松さんを止め――」
隣を見て絶句した。
一松さんもすでに裸になっていた。ニヤニヤしながら私を見ている。
「愛菜ちゃん、どうしたの? 一松兄さんの裸がそんなによかった? ボクも脱いだよ?」
うしろから肩を叩かれ、私は反射的に振り返った。
「きゃ!?」
トド松さんも裸、その横のカラ松さんも全部脱いでいる。おかしい。絶対に花のせいだ。
「おそ松さん! 十四松さん! ここはまずいです。早く外へ行きましょう!」
「外ー? なんでー?」
十四松さんが呑気に首を傾げる。二人はさっき脱いでそのままだから、すでに全裸だ。
「十四松、状況見てわかんねぇの? とりあえず外へ出るか」
おそ松さんがゆらりと立ち上がった。
よかった、まだ花は効いていない。しかもさすが長男だけあっておそ松さんは冷静だ。
「とりあえず出ましょう!」
一刻も早くここから離れたい。私はおそ松さんの手を引っ張った。
瞬間――
ぐいと強く手を引かれた。
「わっ!?」
勢いあまって尻もちをつく。おそ松さんがのしかかってきた。
「なんで外に出なきゃなんねーんだよ。ここなら外から見えないしやりたい放題! まあ、外でも誰もいないけどな」
うそ! おそ松さんまで!?
驚いている間に花びらがはらはらと顔の上に落ちてきた。十四松さんが花を拾って私の顔にかけたのだ。
「あはー! 愛菜ちゃんも気持ちよくなりたいよね!?」
「っ……」
まただ。
視界がかすむ。身体の奥底から頭をもたげる厄介な熱。まるで溶岩がどろりと流れていくように、興奮が徐々に身体の中に広がり支配していく。