第30章 熱帯夜【逆ハー】
「あはー! 起きちゃった! 愛菜ちゃんは眠れないのー?」
暗闇の中でも十四松さんの大きな口はよくわかる。
「私もさっき起きたんです」
「そっかー! 疲れてるのにねー! 愛菜ちゃん、カラ松兄さんたちとさっきセクロスしてたよね!?」
「っ!?」
直球も直球。なんでわかったの!?
とたんに額から汗が吹きでてくる。
「だって、愛菜ちゃんもカラ松兄さんも一松兄さんもトド松もみーんな同じにおいがしたよ! それってセクロスだよね!?」
「えーっと、いえ、その……」
「隠さなくていいよー! もしかして、カラ松兄さんたちは愛菜ちゃんのおっぱい触ったの!?」
おっぱいどころか全身愛されたけど、言えるわけがない。
「ほ、本当に何もしてないですよ?」
「マジでぇ!? 愛菜ちゃんの嘘つき! あははっ!」
「…………」
う〜ん、完全にバレてる……。
「ねぇねぇ、愛菜ちゃん! ぼくもおっぱい触っていい?」
「だ、だめっ」
「えー! なんでぇ!?」
「十四松さんっ、シーッ! 声大きいですっ」
背中のおそ松さんがモゾモゾと動いた。十四松さんはまったくめげない。
「カラ松兄さんたちだけズルいっす! ぼくだってセクロスしたいよー!」
「十四松さん! だから、もっと声のトーンを落と――」
「本当だよなぁ。あいつらだけお兄ちゃんより先に童貞卒業しちゃうとかマジやってらんねーよな。愛菜ちゃん、責任とってよ」
とつぜん耳元で誰かに囁かれ、私はビクッと震えた。
え? おそ松さん……? 起きちゃった……?
おそるおそる振り返ると、おそ松さんがニヤニヤと私を見ていた。