第30章 熱帯夜【逆ハー】
「あ、あの、ハニー? オレのことは? オレたち愛しあっているよな?」
泣きそうな顔で近寄ってくるカラ松さん。
「カラ松兄さんはもう楽しんだでしょ!? しかも避妊しなかったよね!? 愛菜ちゃんの体をちゃんと考えてよ!」
トド松さんがシッシッと追い払う。
「う……す、すまないっ! でも、花の香りが強く効いていたみたいで余裕がなかったんだ!」
そういえば、カラ松さんは花をずっと身につけていたんだっけ……。ぼんやりと考える。
私はカラ松さんに囁いた。
「私、カラ松さんを愛してます……。でも、トド松さんも愛してるんです……」
カラ松さんの顔が引きつる。
「そ、そうか。フッ、愛とは常にミステリー! 謎に満ちているよな……ハハ……ハハハ……ハ……ううっ……」
「も〜! カラ松兄さん、笑いながら泣かないでよ! こっちが萎えちゃうでしょ!? おとなしくしててね! ……じゃあ、愛菜ちゃん、いいかな? ボクはおへそを触りながらしたいな〜! 上に座ってくれる?」
あぐらをかいて、いそいそとゴムをつける。こういうところは男らしい。
「はい……」
頷いて彼の上に跨がった。座ってるするのも楽しそう。
「いきますね……」
腰をゆっくりと下ろしていく。瞬間、うしろから誰かにお尻を掴まれた。
「待って……。あんた、本当にどうしたんだよ……」
「一松兄さん!?」
トド松さんの声に振りかえると、一松さんが私を見つめていた。優しい瞳が心配そうに揺れている。
「ねぇ、あんた大丈夫……? そんな軽い女じゃないだろ……? やめなよ……」
「一松さん……」
軽い女じゃないなんて、私のこと知らないくせに。でも、そんな優しい顔されたらまたときめいちゃう……。
私はトド松さんから離れようとした。
「あーもう! こんな寸止め、生殺しでしょ!? なんで邪魔するかな! 一松兄さんのバカッ」
トド松さんが落ちていた花を一松さんに投げつける。頭にあたって地面に落ちた。