第30章 熱帯夜【逆ハー】
「愛菜ちゃん! やめてあげて! 一松兄さんは女の子に耐性ないんだから死んじゃうよ!?」
トド松さんが割って入ってくる。見ると、一松さんは顔中泡まみれのままで気絶していた。
一松さんってば、私を置いて先に気絶しちゃうなんて……イジワル。
仕方がない。
「トド松さん……」
私はターゲットを変えて近寄った。
「ひぃっ!?」
ヘビに睨まれたカエルのように固まるトド松さん。
よく見ると可愛いお顔してるなぁ……。一松さんも好きだけど、トド松さんも好き……。
「愛菜ちゃん、落ち着いて! ねぇ、とりあえず何か着よう? ボクのパーカーを持ってこようか?」
「パーカーなんていらないです。トド松さんも脱ぎましょ……?」
私はトド松さんに抱きついた。
「は!? ちょっ!? 愛菜ちゃん、待って! 嬉しいけど! 裸は本当にヤバイから! ねぇ!」
勢いあまってトド松さんと一緒に草むらに倒れこむ。下敷きになった彼にすかさず唇を重ねた。
「んん!?」
トド松さんが驚いている間にピチャピチャと唇を舐める。仄かに感じる甘い味。おいしい。
「ぁ……やめっ……あ……」
トド松さんの身体から力が抜けた。目がとろんとして気持ちよさそう。もう可愛いなぁ。もっと感じさせてあげる。
「んっ……トド松さん……好き……」
口内に深く舌を差しこみ、唾液を交換する。ゆっくりと味わい唇を離すと、トド松さんは苦しそうに呻いた。
「ボク……これを跳ねのけられるほど……強くないんだけど……」
理性と欲が闘っているのがわかる。我慢してるの? しなくていいのに。
「私と一緒に気持ちよくなるのはイヤですか……?」
白い花を彼の顔の前で振ってみせる。
「っ!!!!」
瞬間、トド松さんの目の色が変わった。